警備員の仕事では、実際に死亡事故が起きています。
警察庁の資料では、2024年(令和6年)の警備業における死亡災害は28人。その約半数が交通誘導警備業務中の事故でした。
私は交通誘導だけでなく、列車見張りや踏切監視、現在は管理・教育にも携わっています。
現場に立っていて怖いのは、明らかなミスだけではありません。
「ここなら大丈夫だろう」
この思い込みが、私は一番怖いと感じています。
公的に確認できる死亡事故事例を見ながら、交通誘導や列車見張りのどこに危険があるのか、現場経験も交えて解説します。
警備員の死亡事故は年間どれくらい起きている?
警察庁が2025年12月に公表した「省力化投資促進プラン―警備業―」によると、警備業の死亡災害は次のように推移しています。
| 年 | 死亡災害 |
|---|---|
| 2019年 | 21人 |
| 2020年 | 28人 |
| 2021年 | 25人 |
| 2022年 | 25人 |
| 2023年 | 35人 |
| 2024年 | 28人 |
同資料では、警備業では年間30人程度が不慮の事故で亡くなっており、2024年の死亡災害のうち約半数が交通誘導警備業務中の事故とされています。交通誘導では、わき見運転などの車両に警備員が轢過される事故が多発していることも指摘されています。
警備員の死亡事故で怖い4つの場面
警備員の事故は「本人が誘導を間違えた」といった単純な話だけではありません。
公表されている事故事例を見ると、立ち位置・車両の動き・思い込み・暑さなど、普段の仕事の延長に危険があります。
1. 一般車が規制帯へ突っ込んでくる
交通誘導では、こちらが止めていても車が止まるとは限りません。
警察庁が紹介している重大労災事故事例には、片側交互通行の規制区域内で誘導していた警備員に、反対方向から来た車が前方不注意で進入し、カラーコーンをなぎ倒して衝突した事例があります。警備員は約5m跳ね飛ばされました。
別の事例では、車線変更を促していた警備員に対して車がそのまま規制区域へ直進し、轢過しています。
私自身、片側交互通行で停止を無視して突破されたことがあります。
突破する車を、体を張って止めてはいけません。
警備員の合図に従わない車への対処は、交通誘導員の合図を無視・突破されたときの対処法でも詳しく解説しています。
2. 工事車両や重機の死角に入る
一般車だけを見ていても危険です。
同じ現場で動く工事車両や重機にも轢かれる可能性があります。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、道路舗装工事現場で警備員がローラーに激突され、死亡した事例が掲載されています。公表事例でも、危険場所に近づくことが発生要因の一つとして整理されています。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「道路舗装現場において、警備員がローラーに激突される」
新人には、「誘導している=運転手から見えている」と思わないことを伝えたいです。
大型車や重機には死角があります。工事車両の真後ろに立てば、運転者から警備員が丸ごと見えていないこともあります。
車を誘導する前に、自分が運転者から見える位置にいるか。
合図の上手さより先に確認したい部分です。
3. 列車見張りで安全な位置を思い込む
列車見張りでは、車とは比較にならないほど「触れたら終わる」という緊張感があります。
2017年2月11日、山陽線の糸崎駅構内で、列車見張員が貨物列車と接触して死亡する事故が発生しました。
運輸安全委員会は、列車見張員が線路閉鎖されていない隣接線路に近づき過ぎた位置で立哨していたため列車と接触したと推定しています。
報告書では、列車見張員が自分の立哨位置を安全な場所だと思い込んでいた可能性も指摘されています。現場は分岐器上で線形が複雑でした。
出典:運輸安全委員会「山陽線 糸崎駅構内 鉄道人身障害事故」
糸崎事故の原因とは別に、私自身も駅構内では「この列車は自分がいる番線には来ない」という思い込みが怖いと感じます。複数の番線がある構内では、列車が見えていることと、自分が安全な場所にいることは別です。
列車見張りの仕事内容や退避の基本は、列車見張りとは?仕事内容・危険性・退避方法でまとめています。
4. 猛暑の交通誘導で熱中症になる
車や列車との接触以外では、熱中症も無視できません。
厚生労働省の事例集には、道路補修工事で交通誘導をしていた警備員が意識不明で倒れているところを発見され、死亡した熱中症の事例があります。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「交通警備員である被災者は、意識不明の状態で仰向けに倒れているところを発見された」
交通誘導は日陰へ自由に移動できる仕事ではありません。配置場所を離れられず、制服・ヘルメットを着用したまま長時間屋外に立つ現場もあります。
水分補給だけでは限界があります。休憩を回せる人数や配置を会社側が用意できているかも重要です。
具体的な対策は、警備員の熱中症対策で現場側・会社側に分けて解説しています。
列車見張りで私が怖いのは「退避が長くなったとき」
列車見張りで怖いのは、退避が遅れることだけではありません。
私が意外と怖いと感じるのは、早めに退避してから列車が来るまでの時間が長くなったときです。
退避した直後は「列車が来るから、いま退避している」という意識があります。
ところが、その状態で待つ時間が長くなると、少しずつ「退避中」という意識が薄れて、ただその場所に立って待っているような感覚になっていくことがあります。
決められた退避時機を守るのは大前提です。
そのうえで、列車が通過して安全を確認するまで「自分はいま退避中だ」という意識を切らさない。そこが大切だと感じています。
列車を見つけることと、自分自身が安全な場所にいることは別です。
里庄でも列車見張員の死亡事故が起きている
2023年12月5日には、山陽線の笠岡駅~里庄駅間でも列車見張員(停止手配員)が貨物列車と接触し、死亡する事故が発生しました。
運輸安全委員会の最終報告では、停止手配員の体の一部が車両限界を支障していたため、列車と接触したと推定されています。
報告書では、停止表示標の白色布を列車から見えやすくするため線路側へ近づいた可能性や、夜間で列車の外形が触車直前まで見えなかった可能性が示されています。
報告書では、経験のある列車見張員でも、触車する可能性がある位置に誤って立つことがあるとして、安全な立哨位置を自ら確認することの継続教育などを求めています。
出典:運輸安全委員会「山陽線 笠岡駅~里庄駅間 鉄道人身障害事故」
なお国土交通省は事故直後の行政指導で、2017年の糸崎駅構内でも同様の死亡事故が発生していたことに触れ、JR西日本に原因究明と再発防止を求めています。
死亡事故を防ぐために警備員本人が意識したいこと
- 車両や重機の死角に入らない
- 一般車が合図に従う前提で立たない
- 「たぶん大丈夫」という思い込みを疑う
- 退避したあとも安全確認が終わるまで意識を切らさない
- 体調がおかしいと感じたら我慢を続けない
「事故を起こさないよう気をつける」だけでは足りません。
ここで車が突っ込んできたら、どこへ逃げるか。立ち位置と逃げ場まで考えておく必要があります。
交通誘導の現場で危険を予測する考え方やKYの書き方は、交通誘導のKY例も参考にしてください。
管理する側は「本人の注意」で終わらせてはいけない
私は現在、警備員を配置・教育する管理側にもいます。
死亡事故を「本人が気をつける」で終わらせるのは違うと思っています。
- 危険な立ち位置になっていないか
- 休憩を取れる人数を配置しているか
- 新人をいきなり難しい場所へ置いていないか
- 無理な規制や工程になっていないか
- 現場から危険の報告が上がったとき止められるか
危険な現場を「警備員が頑張って何とかする」のは、安全管理ではありません。
教育不足や無茶な勤務、危険を訴えても聞いてもらえない会社なら、現場の問題ではなく会社側の問題も疑った方がいいです。
会社を見る判断材料は、危ない警備会社の見分け方でまとめています。
まとめ|警備員の死亡事故は「いつもの仕事」の中で起きる
警備員の死亡事故を調べて改めて感じるのは、特別な状況だけで事故が起きているわけではないことです。
車の近くに立つ。重機の死角に入る。安全な場所だと思い込む。暑さを我慢する。
どれも普段の仕事の中で起こり得ます。
私自身も現場に立つ以上、他人事ではありません。
「自分は大丈夫」ではなく、「ここで事故が起きるなら、どう起きる?」まで考える。
それが警備員として大切な安全対策だと思っています。
事故を起こしたときの責任や、誘導ミスが起きたあとの対応まで知りたい人は、警備員がミスするとどうなる?誘導事故の責任と対処法も確認してください。

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