「警備員の熱中症対策は、水を飲んで空調服を着れば大丈夫?」
「交通誘導中に具合が悪くなったら、どうすればいい?」
「会社はどこまで準備してくれるもの?」
夏の交通誘導では、水分補給や空調服が欠かせません。
ただ、それだけで熱中症や脱水を完全に防げるわけではありません。
私の会社では、水をしっかり飲み、空調服を着て、普段から現場へ出ていた隊員が突然倒れたことがあります。
医師の診断は脱水症状でした。
現場を振り返ると、水は飲んでいたものの、塩分補給はしていませんでした。
この出来事で、水だけでは足りない場面があること、空調服を着ていても安心しきれないことがよく分かりました。
この記事では、警備会社で隊員の配置や教育に関わっている立場から、水分・塩分補給、休憩、身体の冷却、交代要員、異変が出た時の対応まで、現場と会社が準備したい熱中症対策をまとめます。
水を飲み、空調服を着ていた隊員が突然倒れた
その隊員は、何の対策もせずに働いていたわけではありません。
- 水分補給はしっかり行っていた
- 空調服を着用していた
- 普段から交通誘導の現場へ出ていた
- 本人も暑さにある程度慣れているように見えた
それでも、現場で突然意識がもうろうとして倒れました。
倒れた方向が反対だったら、危険な場所へ転倒していた可能性もあります。
医師の診断結果は、脱水症状でした。
現場を振り返った時に大きな反省点として残ったのが、水は飲んでいたものの、塩分補給をしていなかったことです。
もちろん、塩分不足だけが医学的な原因だったと、こちらで断定することはできません。
気温、湿度、作業時間、その日の体調など、複数の条件が重なっていた可能性もあります。
また、暑さへの慣れは、一度つけば夏の間ずっと続くものではありません。
梅雨明け、連休明け、急に気温が上がった日、新人が初めて暑い現場へ入る時は、普段以上に休憩や作業時間を見た方がいいです。
普段から現場へ出ている人でも倒れます。
「暑さに慣れているから大丈夫」と過信しない方がいいということです。
ホンネちゃん対策しているように見えても倒れることがあるワケ。
「いつも現場に出ているから大丈夫」も、過信しない方がいいよ。
警備員の熱中症対策は7つまとめて考える
警備員の熱中症対策は、水分補給だけを切り取るより、次の7つをまとめて考えた方がいいです。
| 対策 | 現場で確認すること |
|---|---|
| 水分・塩分 | 何を、どのタイミングで補給するか |
| 休憩 | 休憩場所と休憩へ入るタイミング |
| 身体の冷却 | 空調服、日陰、冷房、保冷用品などを使えるか |
| 交代要員 | 具合が悪くなった時に誰と交代するか |
| 体調確認 | 本人だけでなく、周囲が異変に気づけるか |
| 報告体制 | 誰へ、どの方法で連絡するか |
| 緊急対応 | 作業離脱、冷却、救急要請、搬送の流れ |
どれか一つを用意して終わりではありません。
異変が出た時に、すぐ作業から離れて対応できるところまで決めておきます。
2025年6月に対策が義務化され、2026年3月には新ガイドラインも策定
2025年6月1日から、改正労働安全衛生規則によって、職場の熱中症対策が強化されました。
義務化の対象となるのは、WBGT28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。
対象となる作業を行わせる事業者は、次の内容をあらかじめ決めます。
- 熱中症の自覚症状がある人や、異変に気づいた人が報告するための連絡先・担当者
- 作業離脱、身体の冷却、必要に応じた医療機関への搬送など、重症化を防ぐ手順
決めた報告体制と対応手順は、関係する作業者へ事前に周知します。
つまり、「具合が悪くなったら本人が適当に休む」では足りません。
誰へ連絡し、誰と交代し、どこで冷やし、どの状態なら救急要請するのかまで決めておくということです。
さらに、2026年3月には、厚生労働省が「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を策定しました。
新しいガイドラインでは、気温だけで判断するのではなく、現場のWBGT、着ている服、作業のきつさ、暑さへの慣れ具合などを見ながら、休憩、作業時間の短縮、配置変更といった対策を選ぶ考え方が示されています。
2025年の改正は、熱中症のおそれがある作業で、報告体制と重症化を防ぐ手順を整える義務を定めたものです。
2026年のガイドラインは、それに加えて、WBGTの把握、暑さへの慣れ、休憩、作業時間、服装、健康状態など、熱中症を予防する具体策をまとめています。
大量に汗をかく現場では水分と塩分を補給する
暑い現場で大量に汗をかくと、水分だけでなく体内の塩分も失われます。
そのため、水だけを飲み続ければ十分とは限りません。
水分を取らずに、塩あめだけをなめればよいという話でもありません。
大量に汗をかく現場では、水分と塩分の両方を考えるということです。
飲料水、スポーツ飲料、会社が用意した塩分補給品など、現場のルールに合わせて定期的に補給します。
のどが渇いてから一気に飲むより、作業前後と作業中に分けて取った方がいいです。
ただし、心臓や腎臓の病気などで、水分や塩分について医師から指示を受けている人は、その指示を優先してください。
空調服を着ていても安心しきらない
ファン付き作業服、いわゆる空調服は、夏の交通誘導でかなり助かります。
何も使わずに炎天下へ立つより、着用した方が体の負担を減らしやすいです。
ただし、空調服を着ていれば、休憩や水分・塩分補給がいらなくなるわけではありません。
- バッテリーが切れている
- ファンが止まっている
- 熱い空気が服の中へ入り続ける
- 汗をかき続けて水分や塩分を失っている
- 本人が体調不良を我慢している
こういう状態なら、空調服を着ていても危険です。
空調服は熱中症対策の一つであって、全部ではないんですよね。
作業前に確認したい熱中症対策
現場へ出てから考えるのではなく、朝礼やKYの時点で次の内容を確認します。
- 当日の気温と現場のWBGT
- 隊員の睡眠、食事、飲酒、体調
- 暑さに慣れているか、休み明けではないか
- 水分と塩分を補給できるか
- 休憩場所と休憩へ入るタイミング
- 身体を冷やす物や場所があるか
- 体調不良時に交代できる人
- 異変が出た時の報告先
- 作業から離れる判断と手順
- 救急要請や医療機関への搬送方法
天気予報や環境省が出している地域のWBGTも参考になります。
ただ、直射日光、路面からの照り返し、風通しによって、実際の配置場所とは差が出ます。
同じ現場でも、日陰側と車道側では暑さが違うことがあります。
可能なら現場でWBGTを測り、午前中だけでなく、暑さが上がる時間帯の変化も見た方がいいです。
特に交通誘導は、配置場所を勝手に離れにくい仕事です。
誰と代わるのかを、具合が悪くなってから考えたら遅いです。
一人配置なら誰へ連絡するのか。
複数名現場なら誰がその場所を引き継ぐのか。
作業前に決めておけば、本人も早めに言いやすくなります。
熱中症をKYへ書く方法は、「交通誘導のKY例|危険予知の書き方と現場別の記入例を解説」でも紹介しています。
本人が「大丈夫」と言っていても周囲で様子を見る
熱中症や脱水の怖いところは、本人が自分の異変を正しく判断できない場合があることです。
具合が悪くても、配置を外れるのが申し訳なくて「大丈夫です」と答える人もいます。
本人の自己申告だけに任せず、周囲でも次の変化を見ます。
- 返事が遅い
- 会話がかみ合わない
- 足元がふらついている
- いつもより動きが鈍い
- 顔色がおかしい
- 頭痛、吐き気、めまいを訴える
- 筋肉がつる
- 汗のかき方や様子が普段と違う
「本人が大丈夫と言っている」という理由だけで、配置へ残さない方がいいです。
返事がおかしい、ぼーっとしている、会話が成立しないなら、本人の自己申告よりも周囲の判断を優先します。
一度作業から外し、涼しい場所へ移動させ、決められた連絡先へ報告します。
早めに外して、結果的に大事に至らなければ、それが一番です。
少し回復しても、すぐ一人で配置へ戻さず、しばらく様子を見ます。
症状が出たら作業離脱、反応がおかしければ救急要請
めまい、頭痛、吐き気、ふらつきなどがあれば、まず作業から離します。
警備員が抜けると現場は困りますが、人が倒れてからでは、もっと大きな問題になります。
- 作業から離す
- 冷房のある室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ移動する
- 衣服をゆるめ、首の周り、脇の下、足の付け根などを冷やす
- 自力で飲めるなら、水分や経口補水液などを少しずつ補う
- 自力で飲めない、反応がおかしい、意識がない場合は救急要請する
意識があり、自力で水分を取れる場合でも、身体を冷やして水分を補っても症状が改善しない時は、医療機関へ連絡して受診や搬送につなげます。
少し休んで元気そうに見えても、そのまま現場へ戻すのではなく、症状の経過を見た方がいいです。
経口補水液も、一度に大量に飲ませるものではありません。
自分で飲める状態なら、様子を見ながら少しずつ補います。
意識がはっきりしない人へ、無理に飲ませてはいけません。
心臓や腎臓の病気などで、水分や塩分について医師から指示を受けている人は、その指示を優先します。
自力で水分を飲めない、呼びかけへの反応がおかしい、意識がない場合は、すぐに救急車を呼びます。
会社へ連絡してよいか確認している間に、対応が遅れてはいけません。
緊急時は、救護と救急要請を先にします。
熱中症が疑われる人は、少し回復したように見えても一人にしません。
医療機関への搬送中や、経過を見ている間も、誰かが付き添って受け答え、呼吸、意識の状態を見ます。
一人配置では、普段から連絡が取れる状態を確保し、連絡が途切れた時に誰が確認へ向かうかまで決めておいた方がいいです。
倒れた方向によっては二次事故になる
私の会社の隊員が倒れた時は、倒れた方向が反対だったら、危険な場所へ入っていた可能性がありました。
交通誘導では、体調不良そのものだけでなく、その場で転倒することも危険です。
車道側、作業車両の進路、重機の近くへ倒れれば、二次事故につながります。
だからこそ、限界まで我慢する前に、早い段階で配置から外れた方がいいです。
周囲の隊員も、様子がおかしい人を車道や車両の近くへ立たせ続けないようにします。
隊員本人の対策だけでは限界がある
休憩できる人数がいない。
交代要員も報告先も決まっていない。
日陰や冷房のある場所もない。
こうした現場では、飲み物や空調服を渡すだけでは足りません。
熱中症対策は本人の根性だけでは解決できません。
会社、現場責任者、発注者、隊長、隊員が、実際に休憩と交代を回せる状態にしておく話です。



「水は持たせました」で終わったらダメなワケ。
具合が悪くなった時に休めるか、代われるかまで見てほしいよ。
熱中症対策をしてくれる警備会社か確認する
交通誘導で長く働くなら、求人の日当だけでなく、夏場の対応も確認した方がいいです。
面接では、次のように聞いて大丈夫です。
- 夏場の休憩は、どのくらいの間隔で取っていますか
- 一人現場で体調が悪くなった時は、誰と交代しますか
- 空調服や保冷用品は、支給ですか貸与ですか
- 飲料や塩分補給品は、会社で用意しますか
- 熱中症が疑われる時の連絡手順は決まっていますか
- 高齢隊員や持病がある隊員の配置は調整していますか
「空調服はあります」だけではなく、休憩や交代方法まで具体的に説明してくれる会社なら、働く側も判断しやすくなります。
会社の見極め方は、「警備会社の選び方|未経験が失敗しないために見るべきポイント」や「危ない警備会社の見分け方」でも紹介しています。
現場で使える熱中症KYの記入例
熱中症についてKYへ書くなら、「水分補給をする」だけで終わらせず、異変が出た後の動きまで入れると使いやすいです。
| 起こりそうな危険 | 暑さで判断力が低下し、体調不良のまま誘導を続けて倒れる |
|---|---|
| 原因 | 水分・塩分不足、休憩不足、体調不良を言い出せない、交代方法が決まっていない |
| 対策 | 作業前に補給方法、現場のWBGT、休憩場所、交代要員、報告先、緊急時の手順を確認する |
| 行動目標 | 自分や仲間の異変に気づいたら、作業離脱と即報告ヨシ |
まとめ|本人が我慢する前に作業から離れられる現場を作る
水や空調服を用意していても、暑さ、湿度、体調、作業時間などが重なれば倒れることがあります。
水分と塩分、休憩、身体の冷却、交代要員、報告先、救急要請までの流れをそろえて、初めて現場で使える熱中症対策になります。
異変があれば早めに作業から離し、本人の「大丈夫」だけに任せない。
会社側も、実際に休める人数と交代体制を作る。
本人が限界まで我慢する前に、作業から離れられる現場を作ることが大事です。









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